第26回「モード・3〜モードジャズ史・和音」
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ベロベロ音楽理論 第26回
「モード・3 〜モードジャズ史・和音」
あけましておめでとうございます!
USTの絵も新しくなりました。今年もベロベロ音楽理論、よろしくお願いします!
今日はモードの講義3回目!
実際にモードが使われている曲をたくさん聴きながら、
モード・ジャズの歴史もたどっていきます!
後半は実際にモードの曲を演奏するときの方法について、勉強しますよー!
……その前に、大ニューーーーーーース!
岩崎太整 先生
日本アカデミー賞優秀賞受賞 おめでとうございます!!!
というわけでベロベロ音楽理論を毎度お届けしているVelvet sunのスタッフからも
ささやかながらお祝いの気持ちをお送りいたしました( ´艸`)
太整先生の出世に伴い、なぜか反比例のごとく扱いを低くされていくみやこ先生。
新年一発目のテキーラ(×3)参ります!featuring太整先生
合計5ショット……
船山美也子2012ver. 壁を越えました
というわけで、新年から縁起の良いベロベロ音楽理論、はじめます!
CHAPTER 1
…………モードの名曲を聴いてみよう
前回学んだ7種類のモードの名前と、特性音を思い出しながら
実際にモード・ジャズの名演を聴き比べてみます。
まずは元祖モードジャズ! マイルスの「So what」 をもう一度聴いてみましょ〜
Miles Davis - So What
1959年収録
ドリアンの平行調でつくられています。
Dが軸音のドリアンから♭E軸音のドリアンに一度だけチェンジします。
So What は、モード・ジャズで初めてレコーディングされた曲とされています。
これ以降、ジャズ界ではたくさんのモードの楽曲がつくられるようになっていきます。
次は、かなり「So What」に近い、コルトレーンの「Impressions」を聴いてみましょう。
John Coltrane - Impressions
1963年
コンセプトはSo Whatと同じく、同モードの平行移動です。
確かにこの2曲は少し似ている雰囲気!
どちらも、解決感がなく、停滞していて ふわふわ〜 っというかんじです。
次は、みやこ先生大好きというハービー・ハンコックの「処女航海」いってみます。
Herbie Hancock - Maiden Voyage
1965年
上2曲よりは、モードのカラーが変化しますが、やっぱり停滞感があります。
波に揺られて船が行くような、ゆらりゆらりと。
お次はなんだか明るそうな、マッコイ・タイナー「パッション・ダンス」
McCOY TYNER - Passion Dance
1978年
ミクソリディアンが使われています。
メイジャーモードなので明るくて楽しいかんじ。
ポスト・コルトレーンとも呼ばれるマッコイ・タイナーは未だ現役!
まさに生けるジャズ史です。
モード・ジャズがなんとなくわかってきましたところで、
次は、スタンダード・ジャズをモードで演奏するとどうなるか、聴いてみましょう!
映画「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中歌、というよりは今ではもはや
「そうだ、京都行こう」のイメージが強くなってしまった♪My Favorite Things
まずは、ジュリー・アンドリュースの歌うオリジナル・バージョン
同じ曲をコルトレーンがモーダルにアレンジしたバージョンがこちら
同じモチーフを、イオニアンやドリアンの中で提示しています。
カラーが脈絡なく変わっていくかんじがカッコイイ。
ちなみにピアノはさっきのマッコイ・タイナー
♪So What は同一モードの中で軸音を変えるという演奏法だったのに対し、
こちらは同一軸音でモードを変化させて演奏しています。
今までアナリーゼしてきた曲のように、ハイ! ハイ!とコードが変わる切れ目がまったくありません!
ずっと同じ世界にいるんだけど、カラーが変わっていく〜
それがモーダルジャズの特徴ですね。
次は、実際に曲をつくるときに
「これはモーダルな曲ですよー!」と主張する方法を勉強します!
CHAPTER 2
……2コードによるモード提示
モーダルな曲であることを主張するために
モーダルな特徴を持つ2つのコードを提示する方法です。
モーダルなコードとかってなんとも苦しい言い方ですが!
大事なので特性音についてちょっと復習。
前回のまとめでイオニアンとエオリアンには特性音なしと書きましたが、
他と比べて特徴的ということで、イオニアン=ナチュラル4度、エオリアン=♭6と理解します。
これが、Cイオニアンのときのダイアトニック・コード
黒い音符が特性音です。
Cイオニアンの特性音はF。
ダイアトニック・コードのうち、
モードにとって相性の良いコードと、相性の悪いコードにわけられます。
イオニアンの特徴が出てるというわけだから、当然、
特性音を含むコードは相性が良い、ですよね。
ここまでで、使えそうなコードは、ファを含む
Dm7 ・ FM7 ・ G7・ Bm7b5
の4つに絞られました。
次に相性の悪いコード。
モーダルな世界には、解決や推進はありません。
コーダルの大好きな「ドミナント・モーション」はまさに真逆の概念。
そこで、解決したくなるコードがモードとは相性の悪いコードというわけ。
解決したくなるコード、それはつまりドミナント!
増4度を含む不安定なコードです。(う◯こ中コードです)
ドミナントはどれだったか覚えていますか?(私は覚えてませんよ!)
G7 と Bm7b5 でした!! というわけでこれも外します。
残ったコードは Dm7 ・ FM7 の2つになりました!
というわけで、
CM7 → Dm7 あるいは
CM7 → FM7
というコードを連続で鳴らすことによって
「今、Cイオニアンの世界にいますよー」
というメッセージを伝えることができるのです。
さらに、コーダル世界の「根音(ルート)」は、モーダル世界では重視されません。
その代わりに、Cイオニアン ←と言うときのCを重要視。「軸音」と言います。
根音を軸音に入れ替えると、こんなコードができあがります。
Dm7/C と FM7/C
これは「ハイブリッドコード」というらしい合わせ技。くわしくは後日。
CM7 → Dm7/C
CM7 → FM7/C
という弾き方をすると、より強い主張になるそうですよ!
軸音がずっとCから動かないので、停滞感が強いことがわかりますね。
こむずかしいし飽きたよ! という不真面目ベロベロ生徒のあなたは、
同じく飽きているみやこ先生画像でなごんでください。
準備しているアカデミー作家太整先生を尻目に、客いじりというか酔っぱらってからむ。
「そこのアナター! 結婚したら妻に仕事を続けてほしいですかー!」 (どうでもいいアンケートタイムーーー)
そんなみやこ先生(30)のセルフ・イメージは、あそうくみこ (本気)
さて、みやこ先生が画面に映っている自分を見て「あれ? 今映ってる私の顔あそうくみこじゃない……」
と驚愕しているあいだに、太整先生の準備ができたようなので、
同じようにCドリアンの場合の2コード提示を見てみましょう。
ドリアンの特性音はナチュラル6なので、Aを含むコードを使います。
そして、さっきと同じく増4度を含むコードを外すと、使えるコードは
Cm7 と Dm7・または・BbM7 となります。
Cm7 → Dm7 あるいは
Cm7 → BbM7 という連続を弾くことでモードの提示ができます。
※ただし! さっきのように Bb/C と圧縮してしまうと、 ミクソリディアンの提示とかぶっちゃいます。
聞くと、確かに明るい感じがしてメイジャーっぽいのです。ここはムズカシイとこ。
増4度は、コーダルな推進を感じさせるのでモードでは避けましょうね!
久々に出ました! 新しい漢字! 「ぞうよど」と読みましょう。
みやこ先生、テキーラ5ショットはつらかったね……
つづいて同じようにフリジアンいってみよー
特性音は♭Bでしたので、2コード提示は
Cm7 → DbM7 あるいは
Cm7 → Bbm7 となります。
つづいてリディアン……なのですが!
ここでちょっとおかしな特例が。
増4度は絶対ダメだったはずなのですが、リディアンでは、
増4度を含むD7から7をとっぱらってしまってトライアドにすればオッケー! でもG7はダメー!
という何ともミョ〜な通例があるそう。というわけでリディアンの2コードは
CM7 → D
CM7 → Bm7 となります。
残りは一気に! 参考程度に!
ミクソリディアン・エオリアン・ロクリアン
ミクソリディアン ♭7 ……C7 → BbM7
エオリアン ナチュラル6……Cm7 → AbM7
ロクリアン ♭2,♭5……提示できない *1
ここまでは、モードの世界をコードを使って説明しようという試み。なので、どうしても限界がでてきちゃいます。
ですので次は、モードの世界をモードの言葉だけでとらえてみます!
みやこ先生も限界だよ! しょぼん顔(´・ω・`)
CHAPTER 3
…………モード独自の和音
使えるコードがどれとどれ、とかって結局コードな話じゃねえか!!
全部忘れろっつったからコードの仕組みなんか忘れたよ!
そんな不真面目ベロベロ生徒たちの心の声が、わたしにはビシビシ聞こえてきます。
そこで! モード世界でオリジナルな、コードにとらわれない和音を教えてもらいます!
そもそもモードとは
この音階の中の音を弾いていればそれでよいというルール(Cドリアンの場合)。
なにも、3度を重ねた「コード」にしばられる必要はないわけです。
そこで! 4度を重ねた和音を使ってみるという技があります。
ドに4度を重ねていって、ド・ファ・♭シ の和音ができました。
同じようにレ以降も4度積みの和音をつくります。
ただし増4度を含む和音は使ってはいけません。
♭ミ・ラ・レ と ♭シ・ミ・ラ は削ります。
で、5パターンの4度積み和音ができました。
これを4th Voicing といいます。
Cの4thVoicing、略してC4という場合も稀にあり。
Cマイナーセブンスの世界を表現したいと思ったとき、
これまでのコーダルな方法ではCm7の+α(テンションなど)しかなかったのが、
モーダルでは5パターンもの和音が使えるというふうに、
表現の幅が広がるのです。
ただし、安定感を生む3度の音を使わないので、着地感がないというか浮遊したサウンドになっています。
そういえば宇宙サウンドの回で、4度積みって紹介してもらいましたね! 宇宙サウンドはモードに通じていたのか〜
ジャズの現場では当然のように使われるテクニックですが、理論化はされていない部分です!
モードには理論体系化されていない部分や、奥義のように秘密裏に伝えられる理論が多いそう!
なかなか独学で習得するのは難しそうですね。しかし
ベロベロ音楽理論はそんな音楽理論の裏社会にも果敢に攻め込んで行きます(かも)!
というわけで次回のベロベロ音楽理論は
第27回 「モード・第4回」
コードとモードをいったりきたりする音楽についての講義です!
2月22日・水曜日・20:00 講義開始です!
お楽しみに!!
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*1: 訂正:提示できました。Cm7♭5→G♭M7