第37回長渕剛「泣いてチンピラ」冨田ラボアレンジ
第36回『Everything大問題!3』
第35回「Everything大問題!2」
第35回「Everything大問題!2」
続! 天才・冨田ラボのアレンジに迫る!
講義動画は→→→こちら
太整せんせいもすっかり全快して復活。
今回も「Everything」の神アレンジに迫りますよー!
服もかぶってコンビにも年季の入ってきたおふたりです。
開始30分は「あなたの知らない焼き芋売りの世界」です。興味のある方は動画でどうぞー。
前回の復習
前回はAメロの1週め部分を分析しました。
冨田ラボ・リハモの特徴は、ふつうの発想のさらに上の段階でコードをつけているってこと。
オンコード、UST、モーダル・インターチェンジ、クリシェの多用が目立ちます。
メロディにダイアトニック・コードをつけただけのアレンジが、こうだと思ってください。
メロディくんは、コードの安全な家の中にいます。
一方、冨田仕事のイメージはこんなかんじです。
ざっぱああーーーーーーーーーん!!!!!ON・THE・崖っぷちです。
大事なのは、メロディくんは変わらず、いる環境だけが変わっているという点。
さらに、すごいのは、メロディくんはあくまで崖から落ちないギリギリのところにいるということ。
ぶっ飛んだアレンジをすることは誰にでも可能ですが、冨田ラボのすごさは、耳に心地いい範囲、ポップスらしさを失わない範囲で最大限のギリギリさを表現しているということなんです!
♪Everything ダウンロードはこちらでどうぞ。
Everything Aメロ
今日はAメロの後半から分析していきます。「♪逢いたい〜想いのまま〜」のところからだよ!
こんな感じです。はいドン。
モーダルインターチェンジとダイアトニックコードが入り混じった複雑な構成。
ここもやっぱりオンコードだらけですね。ベースラインが冨田ラボならでは。
変化のある「あの人と笑い合う」のところに注目。
G♭m7 → G♭m7/D♭ → G♭m7/B → B7/A
コードは G→B ですから一般的な II-V モーション。
そこにベースラインだけを G♭→D♭→B→A とクリシェさせることによってジャズっぽさを回避!
ちょっと上げて、そこからひたすら下げていきます。カルロス・ジョビン並みのサゲサゲアレンジ。
しかも、最後のサウンドは B/A 。
ベース音の全音上のメジャートライアドをのせるタイプのUSTです。
テンションが入ったとてもかっこいいサウンドになっています。
独立して聴くとすんごいイカツイ音に聞こえるのに、これを違和感なくサラリと混ぜてくるところが冨田ラボの神業。
☆「♪を〜〜〜〜〜〜〜」の最後 Gdim はパッシング・ディミニッシュ。次にくるFm7に華麗にスルーパスが決まってます。
まとめはみやこせんせいの直筆ノートだよ!
ピンクの部分はモーダル・インターチェンジ(曲のキーはD♭メジャーなので、D♭マイナーからの借用)。
青の部分はダイアトニックコード、もしくはセカンダリードミナントなど。
平穏と不穏がいりまじっていますねー。
ときにこういうパンチがきいたヤツが出て来るとこが安心できない。
さーてお次はBメロだー!
Everything Bメロ
ダイアトニックコードだけを使うと、こういう感じになります。
冨田ラボの実際のアレンジはこちら。
見慣れてきたのかな? そこまでの変化ではないような……。
あれ??青ばかり。 ダイアトニックコードだらけということです。
今まで散々モーダルインターチェンジをしておいて、Bメロはダイアトニックコードだらけ。
優しい、理解が出来る、なんだ簡単じゃん。
しかし、決して安心してはなりません。
さあ、久しぶりのベロベロ名物。恋愛でわかる音楽のお時間がやって参りました。本日のお題は「DV夫」。
先生いわくこの優しさはDV夫のハネムーン期。嵐の前の静けさです。
短期連続ドラマ『ディブリシング』 第一回「愛しき人よ〜泣き疲れて眠る夜〜」
“冨男”の暴力に怯えつつも離れ切れない“みしゃ子”。
「だって時々は優しいんだもの。あの人には私がいないとダメなの」。
いつになく機嫌のいい暴男。久しぶりの旅行を前に、おだやかな日々が訪れました。
しかし悲劇は荷造り中に起きたのです。ちょっとした行き違いから激昂する冨男。
強烈な一撃がみしゃ子を襲いました……。
たとえが重いよ!! せんせいのバカ!!!!!!!!!!
最後のコードを見てください。F/A♭。これヤバい。これDVだから。
穏やかな日々をブチ壊しにする強烈なパンチです。
これ、ちょっと今までの講義でも聞いたことないおかしな音。
「フリージャズじゃないんですよ! ポップスなんですよ!」ってみやこ先生。
しかもサビ直前にこんな音ふつー持ってきませんよ。ヤバいです。
でもこれが違和感なく、本当にギリギリの危うさで織り込まれてるところが本当にすごい。
発想としては F/A♭7 なんですね。これなら♭9・11のテンションの入ったUSTになります。でもセブンスの音が入ることによって音にえぐみが出過ぎる。そこでオンコードにしてちょっとだけすっきりさせている。本当に繊細な作業です。
ちょっと衝撃を受けたのでBメロ実演部分だけ切り出してみましたよ。忙しい人向け。どうぞお聞きください。
曲聴いているとさらっと流しちゃうんですけど、たしかに「わたしだけ〜〜〜」のあと、「ヨーエビー」の一瞬前に、ためがあって、空気がふっと変わる瞬間がありますよね。あれだ、あれ。「さらっと流せる」ようになっているところがスゴイ。
警察沙汰にならないギリギリのラインで繰り広げる暴力です (´・ω・`)?
動画では、パンチなしver. やり過ぎver. などいろいろ演奏してみてます。比べるとよりわかりやすいですよ。
崖から片足はみでた感じ(みやこ先生に膝入れてる画像ではありません)
DV男から逃れる方法は1:30くらいからみやこ先生が熱く語ってくれてるよ!
というわけで、ギリギリパンチを喰らったところでいよいよサビ!
『ディブリシング』第二回「Don't look back〜私だけ見つめて〜」計算し尽くされた暴力……。
入院させたり、警察沙汰にならないように力加減をするのが冨男なのです。
みしゃ子は目を腫らしつつも、明日からの旅行に備え荷造りを終わらせるのでした。きっと楽しい旅行になる、彼も変わってくれると信じて……。
Everything サビ
猛り狂う冨男の独壇場。サビのコードはこうなっております。
コード(ハーモニー)とベースラインがまるでモードのようにホリゾンタル(平行)で自由な動きをしています。
モードはそれぞれの動きがバラバラで、バーティカル(縦方向)がないのが特徴ですが、バーティカルに切り取ってもきちんと成立したコードになっています。
前半「You're everything 〜 あなたが想うより強く」
入りはダイアトニックコードでおだやかに進行します。夏が過ぎ風あざみな進行です。
ソウルの必殺技 A♭m6 → D♭7 → G♭M7 (VIメジャーに対するII-V)なんかをさらりと無駄使い。
そして!
UST!! A♭/G♭ ドカン!!
そして!!
バキーーーーーーーッこのサウンドこそTHE・冨田ラボ
そしてまたごく普通のセカンダリードミナントです。
変な音ときれいな音が交互にあらわれます。もう精神状態が不安定。
わかりにくいからDVでたとえます。
『ディブリシング』第三回「あなたが想うより強く〜You're everything〜」昨夜の一幕が噓のように上機嫌の冨男。早起きして楽しそうに車を回してきました。「行こうぜ!」
(よかった…楽しい旅行になりそうだわ…)一安心のみしゃ子でした。そこになんと冨男からのプレゼント。「これ! 帰りに渡そうかと思ってたんだけどさ!」
(え…出発したばかりなのにもうサプライズ…?)みしゃ子は内心不可解に感じながらも、冨男からのプレゼントに笑顔で応えました。
まるで「少年時代」(〓井上陽水)のように無邪気に振舞う冨男。
しかしそれもやはりかりそめの姿でした。
ご当地名物を食べながらのパンチ、
観光地を巡りながらの強烈キック。
豹変してばかりの冨男に、振り回されるみしゃ子なのでした。
ちなみに「強烈キック」の E/B♭ は 薩長同盟にたとえることもできるそうですよ。
歴史好きの生徒の皆さんはこちらの太整せんせい解説で理解を深めてください。
日本の革命のために薩長を結び、自分は身を引いた龍馬。
まさに J-popを洗濯致したく申し候 です。
後半「優しい噓ならいらない 欲しいのはあなた」
1小節目は得意の2段階アレンジ。
なんすかこれ、見たことないっす。
E♭m7♭5/A → E♭m7♭5/A♭
発想はこうなのだろうという感じですがもはやコードとして成立していません。
今まで勉強してきたコードの概念をぶち壊す和音です。
そしてラスト、一番の最後なのにトニックじゃない!!!!なんで!!
どしっとした着地じゃない、何か別の場所に戻ってしまったかのよう。
さあ、どんなつくりかドラマで確認しましょう。
『ディブリシング』最終回「優しい噓ならいらない!!」家路につく車内には、すっかり疲弊しきったみしゃ子の姿がありました。
正気と狂気のあいだを揺れ動く冨男の様子は、とても表現できない。
助けを求めようにも、伝える言葉がないのです。
(やっぱり、この人にはわたしがついてなきゃ……!)
旅の終わりに、いつもと少しだけ違って見える日常が待っていました。
やまとなでしこのように、耐え忍んで生きることを決意するみしゃ子なのでした…。oh yeah…。 〈完〉
え? オチなんかないですよ…。曲を表現しただけだもん……。
まとめ!!
さあこれで一番まで全部分析しおわりました。
いちばん強烈だったのはサビ前の F/A♭ でしたね。
DVあり維新ありの解説、いかがでしたでしょうか。
恐るべし冨田恵一。
今日はたくさん勉強しましたが、ここで出て来たワザ、安易に取り入れるなかれです!
一歩まちがうと崖からまっさかさま。大事故につながりかねませんよ。
あとこんなDV男、さっさと捨てちゃいましょうね。
これ、耐えられんのみしゃ子くらいだから。まじで。歌姫だから。
最後に譜面だけおいときまーす。(見づらくてごめんなさい)
演奏家のみなさんは、結婚式での無茶振りに備えて練習しておきましょう!
次回も引き続き、Everything をガンガン分析していきます!!
お楽しみに!!!!!
第34回「Everything大問題!」
第34回「Everything大問題!」
天才・冨田ラボのアレンジに迫る!
これまでの講義で幾度となく聞いた謎の「Everything問題」。
数々のミュージシャンを阿鼻叫喚の地獄に突き落とす、シンプルなメロディと複雑なアレンジ。
音楽家たちは言います。
決して結婚式の二次会で「Everything」をリクエストしては、ならぬと……。
決して、初見で「Everything」を弾こうとしては、ならぬと……。
今日はついに、その、謎の「Everything問題」の全貌が明かされます!!!!
で! 早速始めたいのですが! まさかの太整せんせいインフルエンザ罹患!!!
ということで、あわや中止か! と思われたのですが、なんとこんな感じに。
ベロベロ34回目にして初の試み。ドーン!
太整せんせいの自宅からのサテライト中継! 21世紀スゲー!
なんなのコレ、海外からとかもできちゃうじゃん、今日のゲストはウェイン・ショーターでーす!とかできちゃうじゃん?
っつーわけで、今日は2元中継でベロベロ音楽理論スタートでーーーす!
たいせい先生のかわりに、みやこ先生には4杯テキーラをキメていただいて。
たいせい先生にはインフルエンザの特効薬「イナビル」をキメていただきます。
粉末吸入タイプの新薬らしい。ヤバい。ヤバい粉。めっちゃ効くらしい。
おえーーーーーーっ / ズボボボーーーーーーーーーーーーーーーー!
CHAPTER 1 …… USTの復習!
まずは、前回勉強した「アッパー・ストラクチャー・トライアド」を復習します。
USTは、コード・オン・コードでしたね。
上にのっかる分子コードになれる条件は、以下の通り。
・テンションを1つ以上含む
・トライアドである
たとえば、CM7にのっけたい場合、Emはダメ(構成音が全部CM7に含まれているから)。
ポイント
メイジャーセブン、マイナーセブンなどの「コードタイプ」によって使えるテンションが変わることに注意!
USTを探すときは、テンションノートを含んでいるコードを探し、
そこからアボイドノートを含んでいるコードを消去します。
そうやって、いっこいっこ検証していくと、
CM7にオンできるUSTのうち、メイジャートライアドはD・G
(II度のトライアド、V度のトライアド)
マイナートライアドはBm・Am になりました。
小まとめ
CM7に使えるUST= D(II)・G(V)・Am(VIm)・Bm(VIIm)
意外とうまく行っているサテライト講義です。「これ、いいっすねー。お客さんの目線は太整さんに行きますしー。問題ないっすねー」
と言いながら気を抜いてイカを食っているみやこ先生。いや、全然、アップで映ってますけど……
で! こういう複雑な構成のコードであるところのアッパー・ストラクチャー・トライアド。
これをアレンジに多様して、メチャカッコいい曲をつくっているのが、冨田ラボこと、冨田恵一さんなのです。
なかでも冨田さんアレンジの代表曲といえば、2000年のメガヒット、MISIA の「Everything」。
後半は、いよいよ「Everything」をアナリーゼしちゃいまーす!
CHAPTER 2 …… Everything問題ってなに!?
なぜ Everything “問題” なのかというと、そこにこそ冨田恵一さんの恐ろしさがあります。
Everything は、ぱっと聞くと、単純でカンタンそうな楽曲に聞こえます。
でも演奏しようと譜面を見ると、びっくりするほど難しい。
なぜなら、単純なメロディに、まったく想定外のコードがつけられているから。
だから、メロディ・ラインのカンタンそうなイメージで、オーケーオーケーなんつって
うっかり結婚式なんかで初見演奏を引き受けちゃったりなんかしたらー
ヒドい目に遭うと。いうわけ。ザッツEverything問題。
どんなサウンドだったか、いっちょう聞いてみましょう!
ギャーーーー懐かしい! 名曲すぎる!!!!!
ここまで勉強してきたベロベロ生徒の皆さんには、
もう曲を聞いてみただけで、なんとなくサウンドの複雑さが感じられたはず。
では、どういうアレンジになっているのか、アナリーゼしてみましょう!
今回はじっくり見て行きますので、今日はAメロまで!
CHAPTER 2 ……
Everything をアナリーゼ その1(Aメロ)
いかに冨田アレンジがすごいか実感してみようということで、
まずは、ごく普通なコードをつけて伴奏したものと、聞き比べてみましょう!
これ、すごいっすよ。
めちゃくちゃわかりやすいので、ぜひ聞き比べしてみてください。
弾き比べは1:10くらいから。
これまで勉強してきたベロベロ生徒の皆さんなら、これくらいのコードは導き出せるはず?
ダイアトニック・コードを機械的にふってみた感じです。
シンプルなサウンドだけど、特に違和感はありません。
聞き比べせず最初にこっちを聞いたら、もしかしたら違っていることに気付かないかも。
これが、シンプル版のコードを起こしてみた譜面。
誰でもつけられるコード、アレンジ前の譜面、というふうに思ってください。
key=D♭なので、ダイアトニック・コードはこうなります。ちょっとむずかしい。
ほんで、ダイアトニック・コードだけを使って単純にコードをつけてみると、こうなりました。
キーがD♭なので、ちょっと難しく見えるけど、構造的には単純。
ところがドッコイ、冨田恵一の手にかかるとこうだ! ドーン(上の段が冨田アレンジ、下の段がダイアトニック)
こんなん弾けるかボケ! と言いたくなるくらい、複雑!!!! (普通に弾けない!)
譜面にするとこうだよ!!!!!!
なんか、もうすでにお腹いっぱいな感じなんですけど、
並べてみるとこうなります。
とにかく、手数がハンパじゃないですね。
弾いてみるとかしなくていいです。これ見ただけで凄さはじゅうぶん伝わります……。
で、具体的に冨田さんがどういった作業をしているかというと、
普通の発想よりさらに上の、2段階目のアレンジをしている、という感じ。
☆冨田ポイント☆1どういうことかというと、Daug/E が登場しているところを見てください。
ノーマルなゼロ段階では、何もつけません。
普通の発想でアレンジするなら、E7 をつけます。
ところが冨田さんは、E7 から3度の音をとって、サウンドをスッキリさせているんです。
それで、最終的に Daug/E が採用されている。
☆冨田ポイント☆2
次の小節もすごいですね。1拍ずつコードが変わっていきます。
ゼロ段階では2拍ずつ E♭m7・A♭7 を使う。
1段階目では B♭m7 E♭7 A♭7 てなもん。
冨田さんの完成版では B♭m7/E♭ E♭7 A♭7 G♭dim。
サウンドに工夫を加え、さらに次の小節のFm7に着地するように最後がパッシング・ディミニッシュになっています。
☆冨田ポイント☆3
4小節目最後の A♭dim も、次の小節頭にゆるやかに移行するためのパッシング・ディミニッシュになっています。
では次の段。
☆☆冨田ポイント☆☆
1小節目… G♭m6 G♭mM7 は D♭m のメロディック・マイナーからの派生。モーダル・インターチェンジ。
2小節目… B♭7のomit7 = B♭aug。エクステンデッド・ドミナント。エクステンデッド・ドミナントはポップスではほとんど見ない。
4小節目… II ー V の進行からの派生。AM7 は D♭mの調性の ♭6M7。モーダル・インターチェンジ。AM7 ー A♭7 が1段階目アレンジ。A♭sus4 の響きを持たす E♭m7/A♭。
全体的に、セブンス・コードが想定されうるようなところを、
あえて3度や7度を引くことでジャズっぽさを避けてポップスらしさを出している、と言う感じでしょうか。
ひえー。今日は超高度! もっと詳しく知りたい方は動画で確認してね。
まとめ!!!!!
今日は冨田恵一アレンジを体感すべく、
Everything のAメロを解析しました。
普通ならこう想定されるコードに対して冨田さんのつけたコード、という対比が
とてもわかりやすかったですね。
こんなふうに並べると、素人目にも一目瞭然な感じが伝わってきます。
どういう発想で最終的なコードを導いたかもっと深く知りたい方は、ぜひ動画で確認してみてくださいね!
続きの解析はまた次回!!
次回予告!!!!
Everything アナリーゼの続き!
めくるめく間奏、怒濤のストリングス、泣かせるサビなどなど
冨田ラボの手腕を徹底分析していきます!
会場に来ればあなたも! 天才アレンジャーに! なれるかも! yo!
2月18日(月曜) 19:30 OPEN / 20:00 START お好きなドリンク付きで ¥1500 です。
ぜひ荻窪ベルベットサンにお越し下さい!
太整先生も次こそは会場にいるよ!
テキーラ冷やしてーーーーーーーーーーーーーー
待ってるからああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第33回「分数コードとUST」
第33回 「分数コードとUST」
お久しぶりのベロベロ音楽理論でございます。
本日の講義テーマは「分数コード」と「UST」
USTはユーストリームにあらず。音楽理論でこの3文字が出て来たら
「アッパー・ストラクチャー・トライアド」と読みましょう。
先生方には2012年最後のショットをいっていただいて。
「今年も1年お疲れさまでした!」ということでベルベットサンから
+1ショットをプレゼント。
ということで2012年最後のベロベロ音楽理論、スタート!
CHAPTER 1 …… 分数コードってなに?
譜面に分数の形で2つのコードが一気に出て来たら、それが「分数コード」。
分数の形、〈C/D〉 、〈ConD〉などのかたちで記されています。
分数コードは「オンコード」とも言います。
〈C/D〉の場合、Dをベース音にしてCトライアドを弾きなさいという意味。
つまり レ+〈ド・ミ・ソ〉の4音のコードになるというわけ。
〈C7/D〉だったりしたら、レ+〈ド・ミ・ソ・シ♭〉の5音になります。
分母は単音、分子はコードだってことがポイントですよ!
分数コードの捉え方は人によってさまざま、例によってあいまいなのですが、
大体、以下の3種に分類できると考えましょう。
1.コードの転回形
2.テンションを含む分数コード
3.アッパーストラクチャートライアド
1.コードの転回形
◆ 分子のトライアドの構成音に、ベース音が含まれているものを指します。
たとえば、〈G/B〉= シ+〈ソ・シ・レ〉。
ベース音のBはGトライアドの3度と同じ音ですね。
Gトライアドを転回して弾くこととほとんど同じ。
聞いてみると、トライアドに厚みが増したようなサウンド。
2.テンションを含む分数コード
◆ コードトーン以外のテンションノートがベース音になっているもの。
たとえば、〈C/D〉= レ+〈ド・ミ・ソ〉
DはCコードから見た9度のテンションノートにあたりますね。
かなり複雑な、広がりのあるサウンドになりました。
ソウルなどで多用される響きです。
3つめの「アッパーストラクチャートライアド」はチョット置いておいて、
分数コードを実感しながら曲の分析にいってみましょー!
CHAPTER 2・アナリーゼ! ♪ 「ガラスの十代」
本日の課題曲は、光GENJIの 2nd シングル「ガラスの十代」
1987年リリースするや、ザ・ベストテンで連続7週1位という記録を叩き出した、大ヒット曲です。
なんと作詞・作曲は飛鳥涼。チャゲアスの、チャゲじゃない方。
知らなかった! ジャニーズ恐るべし!
あ、ちなみにベルベットサンで1年かけて行ったジャニーズ研究の集大成が本になって原書房さんから出版されました(!)
- 作者: 大谷能生,速水健朗,矢野利裕
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2012/12/10
- メディア: 単行本
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ぜひ一家に一冊。
「ガラスの十代」に戻りましょー。
聞いてみるとかなり複雑なサウンド。
聞いてすぐにはなんのコードか判断がつかないような場合、
分数コードが使われていることが多いそうです。
ベースラインを「下げていきたい」「上げていきたい」という
Askaの意志がはっきり感じられるつくりになっています。
分数コードを使う場合、クリシェで下げたり上げたりしたいことが多い。
記譜するとき、構成音が同じものを、コードの種類で記すかオンコードで記すか
迷うことがあります。
そういう時は、曲の「文脈」とコードの特性を意識して、
演奏の意図に合っている方を記しましょう。
広がりが欲しいのか、ぶら下がる感じがほしいのか、とか。
ということで、3つめの「アッパーストラクチャートライアド」に戻ります。
CHAPTER 3・ アッパー ストラクチャー トライアド
またこんがらがった名前のやつが出てきました。名前長すぎ。必殺技か。
けれどベロベロ音楽理論、「ハーモニック マイナー パーフェクト フィフス ビロー」も
「コンビネーション オブ ディミニッシュド」から溢れ出るラスボス感も、なんとか倒してきました。落ち着いて、意味を考えてみましょう。
……「上・構造・トライアド」。ほら、一気にカンタンそう! ビビらすんじゃねーよ!
要するにこうだ! ドン!
さっき言いましたね、分母のアルファベットは単音であると。
コード・オン・単音 ね。
で、
アッパーストラクチャートライアド(略してUST)は分母もコード!
コード・オン・コード!
人によっては、こういう風に書き分けする場合もあるそう。
左が普通のオンコード、右がUST 。
ただし、実際的には一気に6和音も演奏することは滅多にありません。
セブンスだと8和音になっちゃうし、濁った変なサウンドになっちゃいます。
いい感じに間引いて使いましょう。
カレーも食べたい、牛丼も食べたい、そんなとき
牛丼にカレーをぶっかけちゃったら、どちらも台無しですよね。
牛丼からちょっと汁とかタマネギとか間引いて、「牛井」くらいのもんにカレーをかければ、
どちらもイイとこどりのカレギュウの完成だ!
USTはそんな感じ!
普通のオンコードは、カレーが優先。カレーうどんな感じですね。
テンションノートをプラスするコードとUSTは、構成音が良く似ているものがあります。
その場合も、どちらを記譜するかは作曲者の意図によります。
コードだと地に足が着いているようなイメージ、
USTはちょっと遊びがある、解釈の幅があるようなイメージです。
おしまいに
今日の講義は「作曲者の意図」が重要ポイントでしたね。
作曲……というより、「編曲」の意図といった方がいいかもしれません。
どのように演奏してほしいか、曲にどんなイメージを持たせたいか、
単にメロディをつくったり、メロディから機械的にコードをつけるだけでなく、
曲そのものに文脈を与えるのが編曲(アレンジ)の仕事。
かなり大事な作業にもかかわらず、作曲家や演奏家に比べて
編曲家の仕事にスポットライトがあたることはヒジョーに少ない!
たとえば、Misia の大ヒット曲「Everything」。
単純なメロディラインにもかかわらず、ミュージシャン泣かせの複雑なアレンジなんです。
このことは、これまでの講義でも、謎の「エブリシング問題」として何度か触れられてきました。
……wikipediaを見ても、編曲を担当した冨田恵一さんのお名前が出て来るのはだいぶ下!!
そこで!
次回のベロベロ音楽理論は編曲を大フィーチャー!
これまで詳しく語られてこなかった「エブリシング問題」が明らかに!
天才・冨田ラボの仕事に迫りまーす!!
新年一発目のベロベロ音楽理論は、1月28日(月曜)!
ぜひ、会場のベルベットサンに足をお運びいただいて、
ベロベロになりながら一緒に勉強しましょー。
ご予約・お問い合わせはコチラから! ↓
http://www.velvetsun.jp/schedule.html#1_28
当日飛び込みも大歓迎ですからー!
2013年も、4年目に突入するベロベロ音楽理論をどうぞよろしくー!
鋼の三十代コンビがお届けします!
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