第34回「Everything大問題!」
第34回「Everything大問題!」
天才・冨田ラボのアレンジに迫る!
これまでの講義で幾度となく聞いた謎の「Everything問題」。
数々のミュージシャンを阿鼻叫喚の地獄に突き落とす、シンプルなメロディと複雑なアレンジ。
音楽家たちは言います。
決して結婚式の二次会で「Everything」をリクエストしては、ならぬと……。
決して、初見で「Everything」を弾こうとしては、ならぬと……。
今日はついに、その、謎の「Everything問題」の全貌が明かされます!!!!
で! 早速始めたいのですが! まさかの太整せんせいインフルエンザ罹患!!!
ということで、あわや中止か! と思われたのですが、なんとこんな感じに。
ベロベロ34回目にして初の試み。ドーン!
太整せんせいの自宅からのサテライト中継! 21世紀スゲー!
なんなのコレ、海外からとかもできちゃうじゃん、今日のゲストはウェイン・ショーターでーす!とかできちゃうじゃん?
っつーわけで、今日は2元中継でベロベロ音楽理論スタートでーーーす!
たいせい先生のかわりに、みやこ先生には4杯テキーラをキメていただいて。
たいせい先生にはインフルエンザの特効薬「イナビル」をキメていただきます。
粉末吸入タイプの新薬らしい。ヤバい。ヤバい粉。めっちゃ効くらしい。
おえーーーーーーっ / ズボボボーーーーーーーーーーーーーーーー!
CHAPTER 1 …… USTの復習!
まずは、前回勉強した「アッパー・ストラクチャー・トライアド」を復習します。
USTは、コード・オン・コードでしたね。
上にのっかる分子コードになれる条件は、以下の通り。
・テンションを1つ以上含む
・トライアドである
たとえば、CM7にのっけたい場合、Emはダメ(構成音が全部CM7に含まれているから)。
ポイント
メイジャーセブン、マイナーセブンなどの「コードタイプ」によって使えるテンションが変わることに注意!
USTを探すときは、テンションノートを含んでいるコードを探し、
そこからアボイドノートを含んでいるコードを消去します。
そうやって、いっこいっこ検証していくと、
CM7にオンできるUSTのうち、メイジャートライアドはD・G
(II度のトライアド、V度のトライアド)
マイナートライアドはBm・Am になりました。
小まとめ
CM7に使えるUST= D(II)・G(V)・Am(VIm)・Bm(VIIm)
意外とうまく行っているサテライト講義です。「これ、いいっすねー。お客さんの目線は太整さんに行きますしー。問題ないっすねー」
と言いながら気を抜いてイカを食っているみやこ先生。いや、全然、アップで映ってますけど……
で! こういう複雑な構成のコードであるところのアッパー・ストラクチャー・トライアド。
これをアレンジに多様して、メチャカッコいい曲をつくっているのが、冨田ラボこと、冨田恵一さんなのです。
なかでも冨田さんアレンジの代表曲といえば、2000年のメガヒット、MISIA の「Everything」。
後半は、いよいよ「Everything」をアナリーゼしちゃいまーす!
CHAPTER 2 …… Everything問題ってなに!?
なぜ Everything “問題” なのかというと、そこにこそ冨田恵一さんの恐ろしさがあります。
Everything は、ぱっと聞くと、単純でカンタンそうな楽曲に聞こえます。
でも演奏しようと譜面を見ると、びっくりするほど難しい。
なぜなら、単純なメロディに、まったく想定外のコードがつけられているから。
だから、メロディ・ラインのカンタンそうなイメージで、オーケーオーケーなんつって
うっかり結婚式なんかで初見演奏を引き受けちゃったりなんかしたらー
ヒドい目に遭うと。いうわけ。ザッツEverything問題。
どんなサウンドだったか、いっちょう聞いてみましょう!
ギャーーーー懐かしい! 名曲すぎる!!!!!
ここまで勉強してきたベロベロ生徒の皆さんには、
もう曲を聞いてみただけで、なんとなくサウンドの複雑さが感じられたはず。
では、どういうアレンジになっているのか、アナリーゼしてみましょう!
今回はじっくり見て行きますので、今日はAメロまで!
CHAPTER 2 ……
Everything をアナリーゼ その1(Aメロ)
いかに冨田アレンジがすごいか実感してみようということで、
まずは、ごく普通なコードをつけて伴奏したものと、聞き比べてみましょう!
これ、すごいっすよ。
めちゃくちゃわかりやすいので、ぜひ聞き比べしてみてください。
弾き比べは1:10くらいから。
これまで勉強してきたベロベロ生徒の皆さんなら、これくらいのコードは導き出せるはず?
ダイアトニック・コードを機械的にふってみた感じです。
シンプルなサウンドだけど、特に違和感はありません。
聞き比べせず最初にこっちを聞いたら、もしかしたら違っていることに気付かないかも。
これが、シンプル版のコードを起こしてみた譜面。
誰でもつけられるコード、アレンジ前の譜面、というふうに思ってください。
key=D♭なので、ダイアトニック・コードはこうなります。ちょっとむずかしい。
ほんで、ダイアトニック・コードだけを使って単純にコードをつけてみると、こうなりました。
キーがD♭なので、ちょっと難しく見えるけど、構造的には単純。
ところがドッコイ、冨田恵一の手にかかるとこうだ! ドーン(上の段が冨田アレンジ、下の段がダイアトニック)
こんなん弾けるかボケ! と言いたくなるくらい、複雑!!!! (普通に弾けない!)
譜面にするとこうだよ!!!!!!
なんか、もうすでにお腹いっぱいな感じなんですけど、
並べてみるとこうなります。
とにかく、手数がハンパじゃないですね。
弾いてみるとかしなくていいです。これ見ただけで凄さはじゅうぶん伝わります……。
で、具体的に冨田さんがどういった作業をしているかというと、
普通の発想よりさらに上の、2段階目のアレンジをしている、という感じ。
☆冨田ポイント☆1どういうことかというと、Daug/E が登場しているところを見てください。
ノーマルなゼロ段階では、何もつけません。
普通の発想でアレンジするなら、E7 をつけます。
ところが冨田さんは、E7 から3度の音をとって、サウンドをスッキリさせているんです。
それで、最終的に Daug/E が採用されている。
☆冨田ポイント☆2
次の小節もすごいですね。1拍ずつコードが変わっていきます。
ゼロ段階では2拍ずつ E♭m7・A♭7 を使う。
1段階目では B♭m7 E♭7 A♭7 てなもん。
冨田さんの完成版では B♭m7/E♭ E♭7 A♭7 G♭dim。
サウンドに工夫を加え、さらに次の小節のFm7に着地するように最後がパッシング・ディミニッシュになっています。
☆冨田ポイント☆3
4小節目最後の A♭dim も、次の小節頭にゆるやかに移行するためのパッシング・ディミニッシュになっています。
では次の段。
☆☆冨田ポイント☆☆
1小節目… G♭m6 G♭mM7 は D♭m のメロディック・マイナーからの派生。モーダル・インターチェンジ。
2小節目… B♭7のomit7 = B♭aug。エクステンデッド・ドミナント。エクステンデッド・ドミナントはポップスではほとんど見ない。
4小節目… II ー V の進行からの派生。AM7 は D♭mの調性の ♭6M7。モーダル・インターチェンジ。AM7 ー A♭7 が1段階目アレンジ。A♭sus4 の響きを持たす E♭m7/A♭。
全体的に、セブンス・コードが想定されうるようなところを、
あえて3度や7度を引くことでジャズっぽさを避けてポップスらしさを出している、と言う感じでしょうか。
ひえー。今日は超高度! もっと詳しく知りたい方は動画で確認してね。
まとめ!!!!!
今日は冨田恵一アレンジを体感すべく、
Everything のAメロを解析しました。
普通ならこう想定されるコードに対して冨田さんのつけたコード、という対比が
とてもわかりやすかったですね。
こんなふうに並べると、素人目にも一目瞭然な感じが伝わってきます。
どういう発想で最終的なコードを導いたかもっと深く知りたい方は、ぜひ動画で確認してみてくださいね!
続きの解析はまた次回!!
次回予告!!!!
Everything アナリーゼの続き!
めくるめく間奏、怒濤のストリングス、泣かせるサビなどなど
冨田ラボの手腕を徹底分析していきます!
会場に来ればあなたも! 天才アレンジャーに! なれるかも! yo!
2月18日(月曜) 19:30 OPEN / 20:00 START お好きなドリンク付きで ¥1500 です。
ぜひ荻窪ベルベットサンにお越し下さい!
太整先生も次こそは会場にいるよ!
テキーラ冷やしてーーーーーーーーーーーーーー
待ってるからああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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